テクノロジー、エネルギー、環境に関する法律問題

汚染環境罪における危険廃棄物の「処置」行為をどのように理解するか

【本件弁護士紹介】:
鄒東輝
【基本的な状況】:
2018年6月、被告人の張某、李某らは共同で協議し、廃棄鉛蓄電池を購入して鉛インゴットを精製して販売した。2018年6月から2019年7月2日までの間、張氏、李氏らはある採石場内に鉛精製工場を建設し、「危険廃棄物経営許可証」を取得せず、建設プロジェクトの環境影響報告書を作成せず、汚染防止基準に合致する施設を整備していない場合、他人を雇って廃棄鉛貯蔵2500トン余りを買収し、解体し、火法冶金技術を利用して鉛板から鉛インゴット1100トン余り及びその他の副産物を精製して利益を得た。
環境モニタリング部門の検査により、工場構内の解体場所の土壌中の鉛含有量は管理値の24倍を超え、クロム含有量は管理値の5倍を超え、工場敷地内の門前溝内の鉛含有量は最高制限基準の27%を超えた。
審判結果及び理由:
裁判所の一審判決は、被告人の張某、李某らが共同で危険物を2500トン以上不法に処理し、一定地域の環境汚染をもたらし、特に深刻な結果をもたらし、環境汚染罪を構成したと判断した。各被告人の犯罪情状に基づいてそれぞれ2年から4年の懲役に処し、罰金を科す。
関連する法条:
『中華人民共和国刑法』第338条:
国の規定に違反して、放射性のある廃棄物、伝染病の病原体を含む廃棄物、有毒物質またはその他の有害物質を排出、投棄または処分し、環境を深刻に汚染した場合、3年以下の懲役または拘留に処し、併置または単一処罰金を科す。特に深刻な結果になった場合は、3年以上7年以下の懲役に処し、罰金を科す。
『最高人民法院、最高人民検察院の環境汚染刑事事件の処理に関する法律適用のいくつかの問題の解釈』(以下『解釈』と略称する)
第三条第(二)項:
刑法第三百三十八条、第三百三十九条に規定された行為を実施し、以下のいずれかの状況を有する場合は、「特に深刻な結果」と認定しなければならない。
(二)危険廃棄物100トン以上を不法に排出、投棄、処分した場合
第16条:
危険廃棄物経営許可証がなく、営利を目的として、危険廃棄物から原材料または燃料として物質を抽出し、基準を超えて汚染物を排出し、汚染物を不法に投棄し、またはその他の違法に環境汚染をもたらした場合の行為を有しており、「危険廃棄物を不法に処分する」と認定しなければならない。
【弁護士の視点】:
一、一審判決は被告人の「鉛インゴットを精製するための廃棄電池」の数を直接「危険廃棄物の不法処理」の数として認定するのは適切ではなく、「処理」の意味の誤読である。危険廃棄物の処理において、「利用」と「処置」は2つの異なる法律概念であり、混同してはならない:
1.『固体廃棄物汚染環境防止法』(以下『固体法』と略称する)第88条は処置と利用に対して法律上の定義を与えた:
処置とは、固体廃棄物を焼却し、他の固体廃棄物の物理、化学、生物特性を変化させる方法で、すでに発生した固体廃棄物の数を減少させ、固体廃棄物の体積を縮小し、その危険成分を減少または除去する活動を達成し、または固体廃棄物を最終的に環境保護規定の要求に合致する埋立場に置く活動を指す。
利用とは、固体廃棄物から原材料や燃料として物質を抽出する活動を指す。つまり、「処置」とは焼却または埋め立てまたは物化することにより、廃棄物を「消滅」させ、新しい製品を形成しないこと、「利用」とは、異なる生産設備やプロセスを経て、新しい製品を生産することです。
『固体法』の具体的な条文においても、「利用」と「処置」を並行、平等な位置に置いている。
第57条に規定されているように、「危険廃棄物の収集、貯蔵、処理活動に従事する単位は、県級以上の人民政府環境保護行政主管部門に経営許可証の受領を申請しなければならない。危険廃棄物の利用経営活動に従事する単位は、国務院環境保護行政主管部門または省、自治区、直轄市人民政府環境保護行政主管部門に経営許可証の受領を申請しなければならない」。
以上の条文は、危険廃棄物の利用と処置が法律上明確に定義されていることを示している。
2、『危険廃棄物利用と処置方法コード表』によると、「利用」と「処置」は2種類の異なる危険廃棄物処理方法であり、例えば:
危険廃棄物(医療廃棄物、クロムスラグを含まない)の利用方法としては、R 4リサイクル/リサイクル金属や金属化合物などが挙げられる。
危険廃棄物(医療廃棄物、クロムスラグを含まない)の処理方法には、D 1埋め立て、D 9物理化学処理、D 10焼却などが含まれる。
3、両高の『環境汚染刑事事件の処理に関する法律のいくつかの問題の解釈』(以下『解釈』と略称する)の中で、危険廃棄物の「処理」と「利用」についてもそれに応じて厳格に区別し、条文の表現の中でも同時に現れ、つまり「利用」と「処理」を並行、平等な位置に置いた。例えば:第六条「危険廃棄物の収集、貯蔵、利用、処分に関する危険廃棄物の経営活動、…」第七条「他人に危険廃棄物の経営許可証がないことを知っていて、それに収集、貯蔵、利用、処分を提供または委託する…」。
以上の法律規定により、危険廃棄物の処理において、「利用」と「処理」は2つの意味の異なる行為であり、危険廃棄物の処理に対する2つの異なる方式であり、両者は平行、並列の法律関係であることが明らかになった。
二、不法に「処理」された危険廃棄物の数を認定する際には、「汚染因子」の数を根拠としなければならず、不法に「利用」された危険廃棄物の数を根拠としてはならない。
排出、傾倒、処置の方式で危険廃棄物を処理する場合、その汚染因子は自然環境中に入った危険廃棄物そのものである、利用の方式で危険廃棄物を処理する場合、その汚染因子は危険廃棄物を抽出する過程で発生し、自然環境に入る汚染廃棄物であり、抽出利用の危険廃棄物ではない。
そのため、危険廃棄物を処理し利用する行為主体にとって、行為主体が「危険廃棄物を不法に排出し、投棄し、処分する」行為を実施すれば、直接に「危険廃棄物を不法に処分する」ことになり、処分する数量が3トンを超えると、刑事追及を受けることになる。利用する危険廃棄物を排出、投棄、または処分しなければ、「危険廃棄物の不法な処分」を構成することはできない。危険廃棄物の精製過程において直接排水、廃棄物の不法埋め立てなどの環境汚染をもたらす違法行為が実施されれば、当該危険廃棄物を利用する後続の違法行為に対して、その不法排出、投棄、危険廃棄物の刑事責任を追及することができる。
具体的には、廃棄鉛蓄電池の処理については、鉛蓄電池を直接投棄したり、地中に埋め立てたりする場合、自然環境に汚染をもたらす因子は、投棄したり、埋め立てたりする廃棄鉛蓄電池である。もし廃棄鉛蓄電池を精製し、その過程で環境汚染をもたらしたのであれば、この時自然環境に汚染をもたらす因子は廃棄鉛蓄電池そのものではなく、精製過程で発生した廃水、排気ガス、廃棄物、つまり精製過程で防汚処理を経ずに直接排出し、倒れ、自然環境に処分された汚染物である。
前者が不法に処理した危険廃棄物は廃棄鉛蓄電池であり、後者が不法に排出し、投棄し、処理した危険廃棄物は廃棄鉛蓄電池を精製する過程で発生した廃棄物であり、廃棄鉛蓄電池自体ではない。
三、『解釈』第16条の内容の理解。
以上、『解釈』第16条に規定されている意味は、証明書のない「利用」(注:『固体法』の「利用」に関する表現と一致)危険廃棄物の行為が環境汚染をもたらしていなければ、危険廃棄物を不法に「処分」し、「利用」すると同時に環境汚染をもたらした場合、危険廃棄物を不法に「処分」することになる。すなわち、危険廃棄物を抽出利用する行為は法律に規定された環境違法行為ではなく、抽出過程における基準を超えた汚染排出行為こそ環境違法行為である。
そうである以上、汚染環境の刑事処罰を受けるべきなのは精製過程で実施された環境違法行為であり、精製行為そのものではない。なぜなら、精製行為は法律で規定された危険廃棄物の環境違法行為ではなく、精製に用いられた危険廃棄物は「処理」される前に自然環境に入らず、自然環境に汚染をもたらすことはできない、環境汚染の原因となっているのは、精製中に発生し、自然環境に直接入り込む危険な廃棄物である。そのため、この場合、不法に「処置」された危険廃棄物の数を認定する際には、抽出に用いられる危険廃棄物の数を根拠としてはならず、実際の排出量を根拠としなければならない。そうでなければ、危険廃棄物を「利用」する行為も環境違法行為と認定し、危険廃棄物を「利用」する行為だけに基づいて人は基準を超えて排出する行為が存在し、その危険廃棄物の「利用」の数を直接危険廃棄物の数と見なすことは、本罪の設立の趣旨にも反するし、「罪の刑の適応」の刑の原則にも反する。
四、結論。
以上のことから、本件2500トン余りの廃棄電池は被告人が回収利用した廃棄電池の数にすぎず、廃棄物として直接「処分」された廃棄電池の数ではない。そのため、一審判決は本件の「危険廃棄物の不法処理」数の認定が適切ではなかった。
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